研究生活 @国立感染症研究所

現在、博士課程1年の林が国立感染症研究所に受け入れていただき今年の4月より研究をしております。

月1回は研究内容やイベントについて更新する予定です。

 

9月までの研究内容                                                                                             (2016.10.03)


S1-PFGE泳動像

上部の強く光っているバンドが染色体DNA、その下流にあるいくつかの細いバンドがプラスミドDNA

プラスミドDNAを切り出した後の写真

左の写真のバンドに相当する部分が切り取られて黒い穴になっている


や~っとアップされたと思われているかもしれませんが。。。

お久しぶりです。アップしますと告知してから早4か月が経ちました。

今回は研究内容と進捗状況についてご報告をしようと思います。

4月から感染研で主にプラスミドの解析をしております。

みなさん、PFGEはご存知でしょうか?PFGEはpulsed-field gel electrophoresisの略で、普段PCR産物を流している電気泳動とは異なり、電場の方向を一定時間ごとに0°,120°、-120°と変えることにより、より大きい分子のDNA(数十kb~数百kb)を分離することができる泳動法です。

PFGEでは菌体を包埋したプラグを作成し、細胞壁を壊す処理を行った後、酵素でDNAを分断します。

私の場合は酵素にS1ヌクレアーゼを使用し、プラスミドと染色体を分離しています。

これを4月から続け、計400株ほどから分離されたプラスミドおよび染色体を次世代シークエンサーMiseqにかけ、塩基配列を解読しています。

次世代シークエンサーは戸山庁舎にある病原体ゲノム解析研究センターの方々にかけていただいています。

ゲノム解析は初めてで、いきなり400株分のプラスミドを解析することは難しいので、とりあえず50株が保有するプラスミドを解析し今データをまとめているところです。 (それでも100プラスミドあります、、)

次の11月初めにアップするころには学会で発表できる形、さらに言えば論文としてまとめ、ここで報告できるように頑張ります。

11月までの研究内容                         (2016.12.18)


XbaI-PFGEによるE. coli 50株の遺伝学的関連性の解析

上から36株がST131で、85%以上のsimilarityで切ると4つの大きなクラスターに分けられた。それ以外に6つのPFGEパターンが見られ、いずれも散発的例であった。


 2008年に収集したE. coli 50株を対象にプラスミド解析を行い、Inc typeが同じであったプラスミドのwhole similarityを見たところ、非常によく似ていました。完全一致ではないので、1つのプラスミドが広まっているということではなく、少しずつ塩基配列の異なる同種のプラスミドが広まっていることが分かりました。また、XbaIという制限酵素によりE. coli株間の類似性も解析したところ、大きい5つのクラスターに分かれ (similarity>85%)それらの多くが上述のconservativeなプラスミドを保持していました。ここまでが11月までの研究で分かったことです。

一度、この50株のE. coliについて疫学的方面から論文にまとめようと考えており、いま文章にしているところです。(年内には指導者のOKが欲しい!) また、集めたデータからさらに次の実験につながるようなテーマも過去の文献を調べながら同時に考えている所です。

 余談になりますが、12月から1か月だけ中国からの留学生が来るので、積極的に話してみようと思います。(英語の練習相手にさせてもらいます!) 1月にはベトナムからの留学生も来ますし、4月からは1室が細菌第2部から独立した部署になり、新しい職員さんも3,4名いらっしゃるそうで、人の出入りでバタバタしそうですが、新しい風が吹き込んでくることを心待ちにしています。

 次は12月の最後に更新し、よい年を迎えられるよう締めくくりたいところです。

12月までの研究内容                              (2016.12.26)


中国人の研修生と一緒にみんなで食べに行った長嶋屋のうどん

つけめんの肉汁うどんを頼みました。お肉のうまみが出ていて、とても美味しかったです!白い麺はきしめんよりも幅広い麺で一反木綿という名前がついていました。オレンジの麺はピリ辛でした。

村山うどんとに分類されるそうですが、村山うどんに定義はないそうです。村山で作られたうどんならなんでも村山うどん!?

越してきたばかりの時は、何もないと思っていたのですが、自転車で近所を回れば意外に食事処がたくさんあります。また、富士山を拝めるスポットもあります。もっと武蔵村山を開拓したいなという気持ちがわいてきました。あ、でも自転車は必須です。


今までの実験結果をまとめたことで、論文の方向性も見えてきました。ただ、仮説を裏付けるにはプラスミドのコンプリート配列が必要なので、ゲノムセンターの方々に協力をお願いする必要があります。そのため、年明けにまとめた実験結果とそこから導いた仮説に関して、ゲノムセンターに赴き発表するということになりました。頑張ります!

また、次の研究内容の実験にようやく良い兆しが見えてきました。130kbpサイズのプラスミドを抽出しそれをキノロン感性の臨床株に移すというのが、まず1段階目の目標です。次の段階では移したプラスミドが臨床株の中でどれほどの期間維持されるかを実験する予定です。9月の終わりごろからプラスミド抽出にとりかかり、抽出できないと悩んで2か月!! (その間に他の実験や、今までのデータ整理など他のこともしていました)

やーっとKadoの変法で効率よくプラスミドを抽出することができ、レシピエントはDH10Bですがエレクトロポレーションも成功しました。臨床株に目的のプラスミドを移すことが1段階目の最終目標なので、まだ先はありますが、1歩前進したといえます。どのようにプラスミド抽出方法を改善したかというと、Kado変法のエタ沈の部分を見直しました。というのも最初のうちはエタ沈の原理をよく理解しないまま実験を繰り返していましたが、これではいけないと思い、11つの作業の意味を考え直しました。なぜ3M酢酸Naを加えるのか、3M酢酸Naの最適な量はどのくらいか、エタ沈後の遠心は低コピープラスミドを回収するためには何分が最適か、70%99%エタノールを使い分けるのはなぜか、エタ沈の間-30℃に静置するのはなぜかなどです。これらの疑問はネットで簡単に知ることができます 1,2。原理をおさえることの大切さを身をもって知るよい機会となりました。

本当に1年が経つのは早く、博士課程1年は残すところ3か月となりました。思い返してみると、今年は「変化」の多い年だったなと思いました。初めての一人暮らしに、今まで周りが学生ばかりだった時とは異なり働いている方ばかりの中での研究など。そのおかげで生活スキルも研究スキルも上達したと思います。(でもまだ文献読みが足りてない気がする)来年ももっと成長できるように、どんなことにも一生懸命を貫きたいと思います。

それでは皆様よいお年をお迎えください!!

[参考文献]

1.   https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8905/8905_yomoyama-1.pdf

2.   https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/nucleic_acid/vol1.html